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「いくらなんでも、それは──」
「誰かわたしの名前を呼びましたか?」
桜の奇行を止めようとした矢先、後ろから品のある声がした。
振り向くと、ブロンドに煌めくセミロングの女が立っていた。
見た感じ、年は俺と同じくらいと予想。
「あ、あなたが天宮さんですか?」
「そうですが、あなたは?」
「桜真珠っていいます! 同じ班なんです!」
大声で名前を呼ばれたせいか、天宮が不機嫌そうに顔をしかめているが、桜の目には入ってないようだ。
さながら、捨てられた仔犬がブンブン尻尾を振っているかのようだ。
「だったら忠告してあげます。人前で大きな声を出すなんて、レディとしてみっともないです。わたしと同じ班なら尚更、あまり目立たせないでほしいです」
「……ごめんなさい……」
……なんだか、飼い主とペットみたいだな。厳しくしつける飼い主と、叱られてシュンと耳を垂らしてる仔犬。
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