最期の碧空

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「お前ら… 全員武器を捨て、キムラスカに亡命しろ。」 「え…?」 あまりに唐突な発言だった。 その為、兵士たちはその言葉の意味をすぐに理解することができなかった。 ピオニーは、ザワザワと騒ぎ出す兵士たちに向かって、さらに言葉を続けた。 「おそらく近いうちにここ、グランコクマへキムラスカ軍が攻め込んでくるだろう。」 その一言に、兵士たちの話し声はピタリとやみ、息を呑んで陛下に視線を注ぐ。 「お前たちはよくやってくれた。 俺の国を…俺の民を… 命を懸けて守ってくれた。 本当に感謝している。」 「陛…下…?」 「…俺にとっては、お前たちも俺の大事な国民だ。 だから… もうこれ以上、俺の為に命を落としてくれるな。」 朝日に照らされ、キラキラと輝く青い瞳は、ニコリと微笑むと、くるりと踵を返し、宮殿へと足を運ぶ。 「待ってください陛下!!」 堰を切ったように一人の兵士が叫んだ。 俺と同じ青い瞳をした青年 アスラン・フリングス少将―… こいつはジェイドの次に頼りになる男だ。 お前にも死んで欲しくないんだよ。 何より、お前に戦争は似合わん… 「それは陛下を…陛下を見捨てろということですか!?」 声が震えていた。 「そうです陛下!! 我々は、この国のことを一番に考え、この国の民の為に奔走する陛下の背中を、ずっと見てきました!! 陛下を残して、私たちだけ逃げ出すなどできる訳がありません!!」 兵士たちが代わる代わる発する言葉を、ピオニーは背中で静かに聞いていた。 「我々は、最期までマルクト帝国の… いえ、ピオニー陛下!! 貴方の民でありたいのです!! 最期までお供させてください陛下ッッ!!!」 青い瞳の青年の叫びに、兵士たちは全員、決意を込めた視線を目の前にいる1人の男の背中に注いだ。 馬鹿やろう… ピオニーは大きく息を吸い込み、そして―… 「馬鹿だな…お前たちは…。」 そう言い残すと、スタスタと宮殿の中へと消えていった。 涙の溢れる瞳を見られたくなかった―… 🍀
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