新・プロローグ

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この子の母親は相変わらず、深夜手前まで仕事をしている。よく身体がもつなと思い質問したら、「人間、六時間寝れば大丈夫」だそうだ。とにかく、パワフルな女性である。 「どう?美味しい?」 「ん、美味い」 呆気ない感想だとは思うが、心底、美味しいと感じる。彼女もそれを理解している様子で。 「そう、よかった!」 嬉しそうな言葉と笑顔を浮かべる。 「今日スーパーで安売りしててね、数量限定の商品の前に人がたくさん居てさぁ、」 「へぇー」 聞き流すような短い返事であるが、決して聞き流してる訳じゃない。むしろ、彼女の話は聞いていたいし、今日の出来事を話してくれるのは、やはり楽しい。恥ずべきことか、毎日それを楽しみにしてる自分がいる。 「あ、お兄ちゃん、そこの醤油とって」 「ん、ほら」 そしてこの子は、相変わらず俺のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ。 。
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