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「いらないって言ってるだろっ!」
振り向き様に腰にしがみついていた夕菜を軽く払いのけた……
……つもりだったのだが、思いのほか夕菜の体重は軽く、玄関脇のシューズラックに吹き飛ばされて衝突する形となってしまった。
「夕菜っ!」
俺の怒鳴り声と、ドンッという衝撃音を耳にした菜摘が居間から飛び出して叫ぶ。
「何て事すんのよっ!」
同時に夕菜が泣き出した。
「あ……いや、ごめ……」
俺の差し出した手が触れようとした瞬間、ビクッと身構える夕菜。
その様を見て、菜摘が声を荒げる。
「自分だけが……達也だけが辛い訳じゃないのよ! 辛い思いをしてるのは自分だけじゃないの! 甘えてんじゃないわよ!」
「俺は……俺は何もそんなつもりじゃ……」
「夕菜が……夕菜が震えてるじゃない! 最低っ! 前は絶対こんな事なかったのにっ!」
一瞬、カチンときた。
「俺だって……俺だって好きでなった訳じゃっ……好きで記憶失った訳じゃねぇんだよ!
大体、昔の俺がいい父親してたかどうかも分かんねぇじゃんか! 案外、お前達の理想の父親像押し付けて俺を操ろうとしてんじゃねぇのか? えぇ!?」
自分が子供を突き飛ばしてしまった事については反省している……。
開き直っている事も自覚はしてるんだ。
でも、駄目だ。
こうなると止まらない……。今まで溜まっていたストレスを全て吐き出すかのように、俺は言ってはならない捨て台詞を吐いてしまう。
「お前達が家族だと思えねぇんだよっ!」
凍りついたその場の空気に耐えられなくなった俺は、二人の顔も見れずにそのまま家を飛び出した。
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