ジュエリー・クリスマス

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  苛々しながら歩いていると、酒の自動販売機が目に入り足を止める。 「くっそ! 何だよっ、コレはよぉっ!」 弱り目に祟り目。缶ビールを買ったものの、取りだし口のアルミの蓋に引っ掛かって商品が出てこない。 「ちくしょう!」 取りだすのを諦めて、年甲斐もなく販売機を思い切り蹴り上げた。 更に苛々は募る。 誰彼かまわず喧嘩でも売りたい気分だ。 ただ、いくら記憶を無くしているとはいえ、十九・二十歳の若僧じゃあるまいし、そんな事をした所で何の得もない。 そのぐらいの計算は出来る。 結局、気が付くとバビロンの前につっ立ってた。 「はぁ……」 溜め息を一つついた俺は、暗い表情のままバビロンの扉を開けた。 「すみません、お客さん。まだ準備中で……あぁ、何だ達也か。今日はまた随分と早いな」 開店前の支度をしていたマスターがカウンターの下から顔を出して言った。 「えぇ……まぁ、ちょっと。座ってもいいですか? マスター」 「おいおい、何だか浮かない顔だな。俺は別に構わねぇが、開店時間までセルフでやって貰うぜ?」 それで構いませんよ、と椅子に腰掛けようとすると、ズボンのポケットの中で携帯が振動する。  【着信中 菜摘】 液晶に映し出された文字を確認するものの、俺は電話に出る気になれずにそのまま電源を落とす。  
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