ジュエリー・クリスマス

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  「いいのか? 出なくて……菜摘さんだろ?」 丁寧にグラスを拭きながら、視線を上げずにマスターが言う。 「あぁ、いいんですよ。いわゆる痴話喧嘩って奴ですから……いや、痴話喧嘩とも言えないかな。今の俺達の関係じゃ……」 『離婚』の二文字が脳裏をよぎり、お互いの幸せを考えたらそれも有りかと、思わず複雑な笑みがこぼれる。 「まぁ、長い人生色々あるからな……。おぉ、そうだ。コレ、どうせ流れるボトルだから飲んじまってくれよ」 そう言って、ターキーのボトルをカウンターの上に差し出すマスター。 「いや。ちゃんと金払いますよ」 「いいから……っと、ちょっと悪いな」 途中で店の電話が鳴った為に会話は中断された。 そうだよな。 人生は長い。菜摘にしたって俺に縛られずに違う男と一緒になった方が幸せかも知れないし。 あんなもやもやした気持ちで生活を続けるなら、いっそのこと……。 そんな思考を張り巡らせていると、それを断ち切るかのようなマスターの怒号が響いた。 「大変だ! 夕菜ちゃんがいなくなった!!」 え……? 「菜摘さんがこっちに向かってる!……何やってんだ、達也! さっさと探しに行け!」 「は、はいっ!」 マスターに背中をはたかれて、よろけるようにして立ち上がった俺は、とにかく扉を開けて外に飛び出した。  
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