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そして、結局。
「・・・・・・牛丼ですか吉野さん」
「黙って食え」
「ぼ・・・・・・暴言!?」
怯えた様に相模先輩は叫んだが、僕は別に反応しない。
食事中に話しかけられると、苛立ちを感じずにはいられない。栄養摂取は静寂を伴うべき行動。学生時代から変わらない信条が、正直過ぎた言葉を吐き出させた。
しかし、咄嗟の一言とは言え、今のは流石に失礼だったので、謝る事にした。相模先輩は冷や汗を浮かべそうな顔で、いいよと言った。
ここは会社から歩いて十分もかからない牛丼のチェーン店。ランチタイムで値引きのサービスがあるため、そこそこ店内は賑わっている。大体が僕達と同じサラリーマンだ。
だがまあ、今はまだ十二時半前。この辺りの店なら本格的に賑わうのはもう少し後になるだろう。会社から近くて助かった。出遅れて、牛丼ごときに待たされるのは快くない。
相模先輩は並盛りに卵を付けたくせに、割らずに備え付けの碗に入れたまま脇に置いている。牛丼は既に半分近くの量に。一体いつ乗せるのつもりなのだろう。
「・・・・・・それにしても、うちの社員もよく来る店だったと思うんですが・・・・・・あまり知ってる顔はいませんね」
「昼飯を食う暇も無い人が一杯だからねぇ今日は。まあ、俺達には関係ないけど」
「何ですか、それ?」
「何か、上のフロアを総括してるサーバーに外から攻撃があったみたいなんだよね。さっき出てくる時に話してたよ、皆」
話ながらひょいひょいと、牛肉に混じった玉葱だけを箸で拾って口に放り込む相模先輩。丼の一角の玉葱を食べ尽くすと、玉葱の無い部分の肉とご飯を掻き込む。野菜とその他を別々にするというやたら特徴的な食べ方に目を引かれつつ、また話の内容に驚きながら、
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