例え世界が正しいとしても

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「オフィスのサーバーって、外のネットワークに繋がってませんでしたよね?第一、うちに電脳攻撃なんかして何になるんです?」 「さあ、目的は知らないけど・・・・・・ローカルネットと外のネットを繋いだ三十分の間に侵入されたみたいね。とんだスナイパーさ」 また玉葱だけを食べ始めた相模先輩は、玉葱を飲み込まないまま水を含んだ。そして流し込む。どうやら玉葱もまとめて。僕は紅しょうがを丼に取りつつ、 「何で繋いだんです?それで、何か盗られたんですか」 「何でかなんて俺だって知らないよ。・・・・・・盗られはしなかったみたいだけど、予算データと何かのソフトがクラッシュしちゃったんだって。詳しく知りたいなら関係者に聞くといいよ。何か知ってるでしょ」 「話題に出したの先輩じゃないですか」 振っておいて説明放棄ってどうなんだろう。世間話なら、曖昧でも別にいいのだろうか? まあ、確かに当事者に聞けばいいだけの話だ。議論して答えが出そうな話題でもないし、うちの課に正式に伝わっていない問題なら、それほど関係もないのだろう。 相模先輩は三分の一になった牛丼を前に、ようやく卵を手に取った。カウンターの角でヒビを入れて、割る。 器の上に。 「・・・・・・どうしてそこに?」 「俺はいつもこうしてるけど」 相模先輩はそのまま卵をかき混ぜ始めた。白身を切る様に箸を動かし、備え付けのボックスティッシュからティッシュを数枚取ってつまみ上げたカラザを包んだ。更にかき混ぜる。 やがて、黄身と白身が完全にかき混ぜられた器に、相模先輩は牛肉を浸した。ご飯はそのまま。肉のみが、相模先輩の口の中へ。 ・・・・・・え、すき焼き? 「相模先輩、あの・・・」 「黙って食え」 「・・・・・・・・・・・・」 言い返された。しかも、僕の言葉で。ちょっと腹が立つ。先輩の得意げな顔で余計に腹が立つ。 とりあえず先輩のご飯に大量の紅しょうがをぶちまけて、僕も冷めかけた牛飯を掻き込んだ。
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