例え世界が正しいとしても

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      「やあ、終わった終わった」 「・・・・・・あれ?」 思わず間の抜けた声を上げる。 ふと気付けば、全てが終わっていたらしかった。囲んでいた野次馬は散り、いるのは相模先輩の仕事振りに傷付けられたプライドをバネにしたかの様に作業に取り組む方々のみだ。 相模先輩は達成感と疲労感を五分五分・・・・・・いや、どちらかと言えば疲労感を多めに含んだ表情で背伸びをすると、ぼんやりと突っ立っていた僕の肩を叩いた。 先程までの、何もかもを平然そのものに片付けていけそうな上司の姿は既に無く、 「さ、俺達は自分の巣でゆっくりしようぜ」 そこにいたのは、のんびりとした笑みを浮かべた、不真面目な変人上司でしかなかった。 ・・・・・・・・・本当に。 ・・・・・・この人は、何なんだろう。 「善仁」 オフィスの出口に向かって歩き出す相模先輩と彼に着いていこうとした僕に、横から声が掛かった。 声を掛けたのは、このオフィスの室長。確か、相模先輩の同期・・・・・・の、筈だったと思う。 室長は・・・・・・宮内さんは、火の付いていない煙草を口の端にくわえたまま、煙草の無い方の口の橋を吊り上げる様に笑って、 「助かった」 短く言った。相模先輩は肩をすくめて、やや睨む様な眼差しで、 「部下の教育がなってないね」 「改善しよう」 バッサリと返された。その返答に、思わずといった様に相模先輩は吹き出すと、手を二回振って歩き出した。 宮内さんは、もう何も言わない。 僕は宮内さんに一度会釈をして、相模先輩の後を追った。
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