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さらりと言う相模先輩を見て僕は額を押さえた。頭痛が増したのは錯覚じゃない。
こうしてまた、会社にウチの部署のイヤな噂が立つのだろう。念の為に言うが、非常識な行動をとるのは相模先輩だけで、僕やその他の同僚は一般人。とんだとばっちりだ。
「先輩・・・TPOというものを考えてください」
「“now the time”、今がその時」
「格好つけた台詞じゃ誤魔化されませんよ」
と言うか今の台詞って格好良かっただろうか?改めて考えるとそうでも無い気がする。
僕は溜め息をついた。あまりにもあからさまだが、正直この人に気を遣おうという気は起きない。
だが、こんな奇行を繰り返しているというのに、相模先輩はまだクビにはなっていない。
疑問に思った。訊いてみた。
「何でクビにされないんですか」
「・・・・・・随分歯に衣着せぬ物言いだね、吉野君・・・・・・。もう少し先輩には敬意を払って接するべきじゃ?」
払う敬意なんてありません、とキッパリ言い放って、僕はまたパソコンに向かった。打ち込み作業はまだ残っている。
前述の通り、彼に長く関わると必ず面倒な事になる。本当は全く会わないのが理想的なのだが、同じ部署ではそれは不可能だ。
しかし、背後から相模先輩の気配が消えない。
まだ何か言ってくるのか、と僕は溜め息を吐き、
「・・・・・・。――破ッ!!」
「ぁがっ!?」
直後、首筋に物凄い衝撃が襲い掛かった。衝撃の直前、暗めに設定していたディスプレイに反射する光景の中で、相模先輩の脚が横一直線に伸びていた様に見えた。
間違い無い。延髄斬りだ。蹴りの勢いが僕の頭に伝達する。運動エネルギーの導くままにディスプレイに顔面から衝突した。かなり痛い。
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