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書類に赤いインクが垂れた。と言うか、鼻血。
「ちょ・・・!何すんれすかっ」
「制裁だ!身に染みたか?」
「書類に血が染みました!」
「汚いな!拭け!」
理不尽すぎる。人事部に彼を解雇できないか話を持ちかけてやりたい。確か人事には同期の加藤がいた筈だ。超の付く甘党なあいつなので高級チョコレート辺りで買収出来ないだろうか。
右手で滴る血を抑えつつ、左手でデスク端のボックスティッシュからちり紙を引き出す。まさか社会人になって鼻にティッシュを詰める事になるとは思わなかった。相模先輩と目が合った。吹き出しそうな顔で僕を見ている。
・・・・・・いつかこの先輩を後ろから刺すかも知れない。本気で。
僕は書類を投げつけられた上に、真正面から僕に突っ込まれた気の毒なディスプレイの向きを修正する。画面に鼻ティッシュの自分が映って軽くイラッとした。
ええい、苛立っても仕方がない。とにかく仕事だ。
さっきも本人と話したが、相模先輩は未だに会社をクビにされてはいない。
もちろんその暴挙が偉い人達にスルーされる訳が無いので、減棒や始末書を喰らった事はある。が、解雇にまでは至っていない。後輩に蹴りを見舞い、流血させる様な彼なのに、だ。
それは何故か。
実の所、理由は分かっている。
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