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「座りな」
そこにあるのはソファー。座って良いものなのか。座ったら何かされるのではないだろうか。そう考えると、手が震えて、視界が揺らぐ。
怖い、怖い、怖い怖い…
「怖いのか?」
座らないのを不思議に思う相手にどんどん距離を狭まられ、恐怖に心臓の音が高鳴る。涙が滲み出てきた。
「参ったな、そんなに悪人に見えるのか、俺…」
苦笑しながら頭を掻く仕草をされても構わず恐怖が脳を包み込む。体がガクガク震えた。
「大丈夫だ」
ゆっくり、自分に向かって手を伸ばされる。頭上に向かっているようだ。降り下ろされる瞬間に殴られた時の痛みを想像し、反射的に目を瞑った。
だが、そのような痛みは感じなかった。優しく頭を撫でられ、その手は頬まで滑らかに滑り、止まる。
深い緑色の瞳を不安気に見つめた。
「安心しろ。大丈夫だ。」
ゆっくりと体が近付いてきて、包み込まれた。
「……ぁ…」
小さく声が漏れる。優しい馨りに力が抜ける。大きな体は暖かくて、心地良い。
涙が零れた。
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