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怖いのと、驚いたのと、何だか少しだけ胸の奥がくすぐったい気持ちが合わさって、気持ちが混沌としている。
「なあ、泣くなよ。そんなに怖いのか?」
少し離れて顔を見られた。涙を見た瞬間、悲しそうな顔をしながら指でそっと雫を拭ってくれる。ただ黙るしかなかった。
どこかにいる自分が、警戒を捨てない。捨てる気も更々ない。長年の生活の中で、人が信用できなくった。それは今も変わらない。
今だって、目の前の人物に抱き締められているのに、やっぱり恐怖を捨てられない。次の瞬間に豹変して殴りかかって来るかも知れない。
「殴らないぜ?」
考えている事を見透かされたのかと、一瞬顔を見つめた。
やはり笑顔を返された。
「蹴ったりもしない。痛い事は、何にもしない。絶対に。約束する。」
念を押して言う相手に困惑しながら俯くと、彼の内ポケットにあるものを見つけて、背筋が凍りついた。
「……――っ!!!?」
「うわっ…!!?」
相手の胸板を押し返して、よろけた彼は体勢を整え、立ち上がる。
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