第四章

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『…ソウ…蒼…』 何度も何度も、繰り返される言葉。そこには人の影はなく、ただ声が聞こえるだけ。 真っ白な視界の中で、その言葉が繰り返されていた。 繰り返し見る夢。一体この言葉は、何を意味するのか。それはおそらく永遠に知ることのない事実。 記憶を遡り続けて、一番最初に覚えているのは、あの檻の中。何年居たのかなんて分からない。正確に言えば、分かる術を持っていなかった。 ろくに食事も与えられず、外の景色を見ることすら困難。 唯一外を見ることが出来るのは、買い物をしに来た客が明けてくれるドアから見える一瞬の間だけ。 楽しみなどない。ただ一つ、望みはいつも胸の中にあった。 ………死にたい。 死ぬ術すら与えてはくれないのだ。餓死しようと、食べ物を拒めば、無理矢理口に入れられた。舌を切ろうとしても、噛み切るほどの力がない。 ずっと、このまま、死ぬまで、延延と。  
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