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綺麗な黒髪に、いつも美しく、でもどこかに憂えを帯びたような深い森の様な緑色の瞳。
―――昨日の人物だ
彼はやはり微笑みながら、こちらに近付いてきて、ベッドにゆっくりと腰を降ろした。
「おはよう」
「…」
「よく眠れたか?」
…………コクン
「――っそうか!良かった」
頷いた事が嬉しかったようだ。さっきより声色が高くなった。
「お前昨日いつの間にか寝ちまったんだぜ?死んだように眠ってた」
温かかった。そこまで覚えてはいる。いつもは回りに怯えながら浅い眠りを続けていたが、今回は違う。その温かさに包まれながら、ゆっくりと、でも自然に目蓋が閉じた。
それはただ泣きつかれただけかもしれないのだけれど。
「あと、髪とか洗っといたから。汚かったしな。服もボロボロだったから、俺が小さい頃着てたやつ。似合って良かった」
言われてから気づく。確かに違う。窓のガラス越しに見える自分の姿を見て、自分はこんな髪の色をしていたのかと、今頃になって分かる。
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