第四章

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「だから返済がてら、あそこの人間を買ってるんだ。でも俺は人間を人形みたいに使うことなんか出来ないし」 風が入ってきて、二人の髪を揺らした。日光に反射して、彼の髪が宝石みたいにキラキラ光った。 「ある程度元気になったら、皆を家族の元に帰してやるんだ。それしか出来ないし、それが一番幸せだしな。」 家族。 家族はいない。多分孤児だったのだと思う。親はいた筈だ。じゃなきゃ自分はいない。夢で合間見る美しい声は、母親であってほしいな、と頭を巡らした。 「お前さ、すっげー死にたいって顔してたんだぜ?なんとも言えない虚無感が、こう、オーラみたいにさ」 手を広げて、ジェスチャーも加えて説明する彼。 「それで、なんだか知らないけど、目についちゃって。まだまだ小さいじゃんお前、だからもっと世界は楽しいんだよって、教えたくて…」 必死だ。その気持ちがこちらにも伝わってきて、胸が熱くなった。  
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