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「名前、呼んでみ?シューヤだ、柊弥。」
深緑の瞳にまた捕らえられる。その瞳は期待と、不安が混じった子供の様な瞳。捕らえられたら、目が離せない。
少し俯きながら相手を見つめて、ゆっくり口を開けた。
「…シュー……ヤ…」
目を見開かれて、肩を抱かれて、嬉しそうに笑った。
「…綺麗な声」
そしてまた笑った。
「お前の名前は?」
名前なんてものない。物に名前は必要でないのだから、あるはずもない。もとより何も自分の物を持っていなかった。
だが、一つだけ、自分の所有物があるとしたら、きっとそれは夢の中の―――
「……ソ、ウ…蒼」
「蒼っ、…素敵な名前だ。なあ蒼?」
確認するように幾度も幾度もその言葉を紡いだ。そしてまた抱き締められた。どうやら彼は抱き締めるのが好きらしい。
別に嫌じゃないから、気にすることはないけれど。こんな風に温かくされたのは彼が初めてだったから。
それを考えたら、また涙が出そうになったけど、自分は決して泣き虫ではないと思いたいから、必死で堪えた。
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