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柊弥はそっと蒼を放した。
そしてゆっくりと、特徴的な優しい声で言葉を紡ぐ。
「なにか、食べたい物はあるか?」
蒼はここにきてから何も口にしていない事に気付いたが、特に食べたい物はなかった。
というよりか、どのような食べ物があるのかがわからなかった。
何も言わずに、俯いてしまった。
「なんだ、空腹では無いのか?お前、食細そうだから、何か食べたほう良いって。…あ、そうだ…なあ、甘いも物は好きか?」
不意に発せられた言葉に、蒼は眉間に皺を寄せた。
…甘い、物?
「知らないのか?甘い物。待ってろ、今、持ってくるから。」
「……あ…」
疾風のように、柊弥はドアの向こうに消えた。
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