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取り残された蒼は、ベッドから部屋を見回した。
すぐ横の壁に立てかけられた鏡を見つける。
そこに映された自分の姿を、まじまじと見詰めた。
くるみ色の髪。瞳は空の様なアクアマリン、…に、色素の薄い白い肌。細く弱々しい躰。
…嗚呼、彼とは全く違う。
蒼は少しガッカリすると、胸元のボタンを2、3個外し、もう一度鏡に映る自分の姿を見た。
そこにはなまなましく刻まれた、いくつもの痣があった。
まだ赤く、熱を帯び、多少の痛みが残る痣から、青黒く変色した数多の傷跡。
見ただけで震えが止まらない。
まだ、体が忘れてはいない。あの、錆びた鉄の馨り。暗くて冷たい鉄格子に囲まれた乱雑な…
「おーい」
…彼だ。
蒼は急いでボタンを掛け、平然を繕った。同時にドアが開く。
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