1892人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
視界に映った彼は、手に小さな器を孕んでいた。
「持ってきた…って、…嗚呼、悪い。ボタン掛け違えてた。」
柊弥は器を置き、そっと蒼の胸元のボタンに手を掛けた。
「あはは、ごめんな。」
蒼は少し複雑な顔をした。
…それは自分の所為であるのに。
なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「っていうか、さっきより顔色悪くないか。…大丈夫か?なにか嫌な事でも思い出したのか?」
「………っ…」
驚いた。何故わかったのだろう。
蒼は改めて柊弥の洞察力の高さを確信した。
しかしながら、彼を不安にさせたくないと思い、蒼は首を横に振る。
「そうか…それならいいのだが…何かあったら、俺に言えよ。…約束」
頬に触れられた柊弥の手は、日差しのように暖かくて、穏やかだった。
最初のコメントを投稿しよう!