第五章

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視界に映った彼は、手に小さな器を孕んでいた。 「持ってきた…って、…嗚呼、悪い。ボタン掛け違えてた。」 柊弥は器を置き、そっと蒼の胸元のボタンに手を掛けた。 「あはは、ごめんな。」 蒼は少し複雑な顔をした。 …それは自分の所為であるのに。 なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 「っていうか、さっきより顔色悪くないか。…大丈夫か?なにか嫌な事でも思い出したのか?」 「………っ…」 驚いた。何故わかったのだろう。 蒼は改めて柊弥の洞察力の高さを確信した。 しかしながら、彼を不安にさせたくないと思い、蒼は首を横に振る。 「そうか…それならいいのだが…何かあったら、俺に言えよ。…約束」 頬に触れられた柊弥の手は、日差しのように暖かくて、穏やかだった。  
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