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蒼は無言で一口、また一口と口に運ぶ。
そして全て口に含み、最後の物質が喉を通り終えたところで、柊弥に目一杯の笑顔が送られた。
その笑顔に、柊弥の胸は密かに高鳴った。
と、柊弥が蒼の顔を見詰めれば、先刻食べた物の欠片が、口元を飾っている事に気付く。
「蒼、口。付いてる…可愛い」
蒼に差し伸ばされた柊弥の美しく伸びた指は、口元の欠片を丁寧に掬い上げ、その欠片を自らの口へ誘導した。
蒼はその行動で口の周りが汚れていた事に多少羞恥し頬が赤くなったが、それ以上に「可愛い」という言葉にかなりの驚きを覚えた。
「…ぇ……っ」
その驚きが声となって空気を振動させた刹那、柊弥は我に還ったように目を見開く。
「…ッごめん、その…変だよな、男に可愛い、なんて…言われたって…嬉しくなんかないよなぁ、あはははは…」
決して否定しなっかった柊弥に蒼は軽く眉間に皺を寄せると、小さく笑い、彼を見た。
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