第五章

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  「…っ…さあ、お前、ずっとここに居るのも暇だろう。屋敷を見て回ろうか。此処の屋敷は無駄に広いからなぁ。」 苦笑しながら、差し延ばされる手。 触れていいものなのかと、躊躇する蒼の小さな手。 「行こう」 僅かな問いかけに絡め取られる細い腕。 力に体を任せ、ベットから伸び地面に触れる足の指先。 「……ぁ…ッ」 長らく使っていなかった蒼の足は、床に触れた途端に力なく崩れ落ちていった。 「…ぉッ…と…大丈夫か?ごめんな」 掬い上げられる体に、突然の浮遊感。 目の前にある柊弥の顔に、蒼はやっと自分が抱き上げられている事に気付いた。 「──ッ……」 柊弥の深い深い森の様な緑の瞳に映る自分の頬が、赤く染まる。 包容力のある身体と確かな温もり。嗚呼、今自分はこの綺麗で大らかな肢体に支えられているのだ。 そんな安心感の後の、圧倒的な羞恥心に圧され、また顔がさらに赤くなるが、抱き上げられているため、自分から柊弥を離れる事が出来ず、気持ちだけがただ混沌としていくのだった。  
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