第十六章

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       何もない空間は、蒼の心に穴を開けさせる。 もの寂しく、辺りは冷たく静寂している。 見渡しても闇一色の世界で、感覚は麻痺して、最早自分がちゃんと目を開けているのかさえ定かではなかった。 「…―――……」 声が出ない。 何も自分を証明できる術が無くなってしまった。 誰も自分の存在を知ろうとはしてくれない。 視界が歪んだ。 きっと自分は、涙を流しているのだ。 でも、拭う術を持っていない。 何もできない。何も。 ―――助けて。 伸ばした手は、そっと誰かに掴まれた。 そこから温かな温もりが伝わる。 …嗚呼、この馨り。 大好きな。温もり。 安心できる。 確かな温もりは、蒼を優しく包み込んだ。     
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