序章

2/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「ぼくはなに?」 それは俺がまだ小学校6年生の頃の下校中の事だった。 小学校低学年だろうか、突然見知らぬ子供が俺の目の前まで駆け寄ってくるや否や、そう問いかけてきた。 「…へ?」 「ぼくはなに?」 思わず間の抜けたような返事をしてしまう俺にその子供は首をかしげ、再び同じ質問をリピートする。 「に、人間?」 多分最高の答えではないだろうか 「……」 しかしその子供は何の反応もせず、無表情のまま俺の顔を一点に見続けていた。 「……?に、人間?」 「…」 聞こえなかったのだろうか、もう一度問うように答えるが 今度は悲しげな表情を浮かべると、無言で何かを探すかの様に辺りをキョロキョロと見渡し始めた。 「こ、これって何な―」 と、俺が喋り終える前にその子供はどこかへと駆けて行った。 俺は疑問の残る中、首を傾げ、その場に立ったままその子供の背中を見送った。 そしてその子供とは再び会うこともなく時だけが過ぎていった。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!