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あの日、確かにそこにあった。三年間、ただただ誰かの家の炎の上で振られるのを待ち続けたそれは…。
フライパン。黄金に輝くフライパン。
値段は………………。
198000円
専業主婦の山本明子(23)は、夫の小遣いを一割カットして、三年掛かりで、その金額を貯めた。そして、三年間(正確にはもっと永いであろう)そこに居座り続けたそいつを買いに走った。
しかし…。
「売却済」
明子は涙した。何の為に夫の小遣いをカットしたのか…。
その時、明子は決意した。
…フライパンを探そう。
その日、明子が家に帰る事はなかった。家に、明子が求めたフライパンがあるとも知らずに…。
売却済になったその日、明子がフライパンを買いに行ったのが、夫から給料をもらった25日の夜だ…。そう。夫(27)は、来る明子の誕生日(26日)の為に、三年前、嫁入り道具を探していた明子が目を輝かせて見ていたそのフライパンを、三年間コツコツと財形貯蓄したお金で購入していたのだ。
そうとはしらず、明子は、そのフライパンを求めて、さまよい続けた。
しかし…ついに見つからなかった。見つかる訳がなかった。そして、気付けば、時刻は零時をまわっていた。明子の誕生日になっていたのだ。明子は、家で待っているであろう夫を思った。しかし、あのフライパンを見つけるまで、帰れない。そう思っていた。何故なら、あのフライパンは…。
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