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あのフライパンは今、美術館で大切に保管されている。純金で作られた「伝説のフライパン」として。 明子の母親は、美術館の関係者であり、美術館の従業員らも葬儀にも参列していた。その時、明子達が、明子の母親が長年追い求めていたフライパンを持っているという話を聞き、是非うちに飾らせて欲しいという事になった。もともとこのフライパンは、日本で初めて作られた純金のフライパンらしい。そんな価値あるものが、何故アウトレット家具店に置いてあったのかは分からないそうだ。美術館側は明子達に月20万の謝礼金を支払うという条件で、フライパンを譲り受けた。明子も夫も、もちろんそんなお金は要らないといったが、美術館側の意向によりそうなった。 葬儀の片付けも一段落つき、家に向かって歩いている時、夫は明子に…。 誕生日おめでとう。 そう言って、そっと手を握った。 …家に帰るまで、二人は手を放さなかった。 お母さん、絶対、幸せになるから、安心して見守っていてね。 ありがとう。 沈みゆく夕日も、今日は一段と輝いていた。
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