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殺風景な_殺風景な部屋。
壁から天井まで、全てが白で
統一された奇妙な空間。
まるであたしのつみを
とがめているようでひどくふゆかいだ_
あたしは押し潰される不安から
逃れる様に、ホームズに抱き付いた_
つもりで。
実際、あたしの指は虚しく宙を切る。
ホームズは知性的でありながらも
鋭利な瞳をゆっくりと閉じ、
僅かに首を横に振った。
端整な顔。
神が直々に造作したとしか
思えない、異様な程の美しさ。
あたしはその笑顔に、横顔に、
そして柔らかそうな黒髪に_
広い肩幅の長身に、何度恋をしたのだろう。
でも、結ばれない。
片や、彼は幽霊だ。
あの日あの時の時間から、彼は
ずっと止まったまま_
心でさえも、初恋の人に奪われたままなのだから。
それ以上は何も言葉を紡ごうとしない
ホームズの優しさを前に、
酷く自嘲的な気分になる。
「はははは…」
笑いが止まらない。
びくりと、
ホームズは、驚いた表情であたしを見た。その仕草さえもその表情さえも_
壊したい独り占めしたい繋がりたい
侵したい蹂躙したい冒涜したい。
あらゆる感情が混沌として、
最終的に愛情に収束せざるを得なかった様な、
そんな怠惰と高慢に満ちた愛情。
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