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何処までそうやって走っていただろう。
深い森の中に、俺は居た。
体ももうくたくただった。
辺りを見渡しても見たこともない風景が広がっている。
大きな木々が全てを覆うように立ち塞がる。
後ろを確認してみる。
誰も追って来ていない。
大丈夫だ。
大きく息をついて、彼女の体を地面の草の上にゆっくり下ろした。
白く、冷たく、動かない彼女。
もう、戻りはしない………。
それでも、彼女の姿が失われるのは嫌だった。
ただ、ここに在ってくれればいい。
ただ、俺の側に……
「ねぇ、悲しいの?」
ひどく幼い声が座り込んだ俺の少し上からふってきた。
少女の声のようだった。
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