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夢の夢
私はきっと、鏡の隙間に存在する世界へと、落ち込んでしまったに違いない。
そう思ってしまうほど、私の眼前に広がる光景は美しかったのだ。
空には雲一つなく、際限を感じさせないほど濃い群青に透きとおり、私の足首を生温かく濡らしている塩水は、空と同じ色を映しだし、粉々に砕けた光の破片を弄んでいる。
そして、同色の世界が地平線まで続き、緩やかな優しい波が海面を撫でることで、この光景に境界線があることをようやく思い出させ、体内で静かに鳴り響く心音に私は感謝した。
私はこの場にいることを躊躇い、背後にあった白いテトラポットへとよじ登った。
海に浸かっていた時は解らなかったが、どうやらテトラポットは沢山あるようで、それがこの世界で唯一の道となって地平線へと続いているようだった。
私はワンピースの裾を気にしながら、ひんやりと冷たい道を歩きだした。
(この道は、はたしてどこまで続いているのかしら)
一歩足を踏み出し、地平線へと近付いてみても、やはりその先にはテトラポットの道が続いている。
世界の終わりと私の間には、永遠が横たわっているのではないかしら、と思った。
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