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その頃当の孝史は――
「だからぁ!!!!くっつくな伊隆ぁ!!」
叫んでいた。
「そんな冷たいこと言わないでくださいよぉ。僕は鬼や幽霊は苦手なんです」
袖にしがみつく伊隆を引きずるように森へと入ったものの、目ぼしいものは何も見当たらない。とりあえず目印をつけながら奥へと入ることにした……が
思うより日が暮れるのが早く森の中は闇が迫っていた。木の間より見える夕焼けの赤が禍々しい。
「くすくす」
「誰であろ」
「愚かしい」
「まことに」
「己を知れ」
『人間風情が』
「誰だ!!」
「うわぁぁぁあ!!!!」
頭上より聞こえる声に
孝史が叫び伊隆が悲鳴をあげる。
「ははは…あははははは」
狂気を帯びた笑い声もまた頭上より降る。
「たたたた孝史様っっ逃げましょう!!おにおに鬼っ」
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