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これは、遠い未来の話…
私の父は、傭兵だった。
戦場に出掛けては、幾日も帰らぬ彼を待つことだけが私の生活のすべてだった。
「マリア‥?」
…声がする
「アベル・アーウェンの娘の…あなたがマリア?」
父とは…違う…
「私はリージアン
アベルに仕えていたアンドロイド」
初めて私は顔を上げた。目の前に立っていた『それ』は、まるでルーブル美術館の彫刻のように、白く完璧なまでに作り上げられた美しい顔立ちをしていた。(…所詮は造り物だな)
「…そうか。アベルは死んだんだな」
アンドロイドは、仕えていた主人が死ぬと、次の後継者(つまり私のことだ)の元へ行くようにインプットされている。
「…マリア
今日からはあなたが私の主人です」
そう言って、差し伸べられたリージアンの手は、父と同じに暖かかった。
12才の夏…私は『彼』の主人となった。
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