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父の死んだあの日から、私の新しい生活が始まった。
「…なぁ、リージアン
なんだか眠れないんだ。何か、面白い話はないか?」
眠れない夜は、いつも父がいろんな話をしてくれた。
父の様にリージアンも、いろんな話をしてくれる。その話を聞くのが、最近の日課になっていた。
「…では、悲しい海の姫の話をしましょう」
「おっ❗なんだか、おもしろそうだな」
私は、彼の隣に座った。
「…人魚は、人間の何倍も長く生きることができます。けれど、人魚の末姫は人間の魂が…
人魚の一生よりも、もっと永い
滅ぶ事が無いと言う、その生命がほしいと願ったのです」
「人魚…
何だそれは…食えるのか?」
「💧架空の生物です
上半身が人間で、下半身が魚の姿の」
リージアンが呆れている。
「すごいな。それは」
私は至って真面目だ。
「…話を続けます💧
ある夜。人魚の姫は、船上で宴を開いていた、ある国の王子に恋をします」
「…リージアン
ただ見ただけでも、恋愛感情というのは生じるものなのか?
王子という職業は、よほど魅惑的なんだろうな」
何度も言うが、私は真面目だ。
「💧童話ですマリア
フィクションです。黙って聞いていて下さい」
「……」
いつもそうだ
リージアンに言わせれば、私には子供らしさが無いらしい
子供らしさ…
私は、同じ歳の子供と遊んだ記憶がない。いつも、父が話相手だった。
だから、『子供らしさ』を知らない…
(…マリアに、いきなりアンデルセンは高度すぎたのかも…💧やはり、イソップあたりから攻めるべきだったかな)
(彼女にまともな情緒反応を期待した、私が間違いだったのかもしれない
もともと、感受性豊なタイプでは無いし…)
「…願いは、叶うのか?
どうやったら、魂を手に入れられるんだ?」
(おっ!いつも無い反応。いい傾向だ)
「それは…
一人の人間を愛し、その人間に愛されたら…魂を分けて貰えるんですよ」
リージアンがうれしそうに、話を続けた。
「…けれど、それは夢…叶う事はない…
人魚の想いは届かない…
王子は隣国の姫をめとり、人魚は海の泡となって消えてしまう…」
「…リージアン」
「はい?」
「…腹減った」
ぐぅ➰
「……💧」
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