―――数年後

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「ハァ………」 ここで言っておきたいのは今のは憂鬱の溜め息ではなく喜びからなる溜め息と言う事だろうか。いやしかし、堪らない。この夜に食べるカップ麺は昼間以上の旨味が込まれている。めちゃくちゃ旨い。 カップ麺の旨さに酔いしれているとふと視界にデジタルの数字で[23:34]と表示してる球体のものがあった。無論、デジタル時計である。このまま起きて深夜の超がつくほどくだらない番組を見るのもいい。俺は立ち上がりもう汁しか残ってないカップ麺を台所へ捨てに行こうとしたら。したらだ、後ろからバァン!とかなり近所迷惑な音がし、思わずカップ麺の汁をこぼしそうになった。こぼさなかった俺を誰か褒めてほしい。 恐る恐る………と言っても大体の予想は出来てるので振り返ると…嗚呼、やっぱりこいつか。そいつははぁはぁ息を荒くし手に封筒を持っていた。バァン!という音はドアを開き過ぎて壁にぶつけたからっぽい。 何をしに来た、などと野暮には聞かない。理由は分かっているからだ。あいつはこちらを睨むように見てきた。 「…………何か?」 さっきも言ったが俺はあいつの目的など百も承知である。そう言うとあいつは疲れ気味で前屈みな体をなんとか起こして人間らしく二本の足で立っていた。……理科の教科書の人類の進化の過程の図を見た気分だ。 「何か?、ですって………?」 呟いたと思ったら靴のままずかずか入って来た。おい、お前はいつからアメリカンになった?毎日ハンバーガーか?止めとけ、太るぞ。 「理由くらい分かってるんでしょ…………」 「さぁさっぱり」 ここでサラっと言ってしまえば知っていたくせに知らないふりをしてしまう。それは相手に対して失礼だと思った俺はしらばっくれることにした。一つ問題があるなら相手には全て伝わっていることだろうか。まぁ、フツー分かるよな…よほどの馬鹿でない限り。そもそも分かんなきゃ意味ねぇんだよ、イヤミなんて。
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