―――数年後

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そいつが俺との距離、わずか3mmまでせまってくるとにらんでくる。…13cm下から上目遣いに睨む事で威風とかそういうものが一気に無くなるんだが。 「さぁ、さっぱり。なんて!よくそんな嘘堂々と言えますね!」 「なんで嘘って言えるんですか?」 「そんなの簡単です!ぷよぷよを片手でクリアするぐらい簡単ですよ!!」 10人に1人の割合で同意してくれそうなよく分からん例えをすると、まるでちびっ子がコナンの犯人がわかったような顔で元気よく言った。 「それは私の勘です!あなたと一年も一緒にいた間に培われた勘ですよ!!先生」 「………はぁ」 …ここまではっきりしないことをなんではっきりと言えるんだ。てか元気だな、もう12時になるぞ、夜中の。 「そ・れ・で!もう言いたいこと分かってると思いますが一応言いますね!」 「はい?何でしょう?」 「原稿です、げ・ん・こ・う!」 「げん…こう?」 横目でカレンダーを見るがそいつ…距離的にはもうこいつか、こいつが勝手に付けた赤ペンの 『〆切!!!』の文字が真っ白なカレンダーに無駄に目立っている。 三日後に 「俺の目にはあと三日後なんですけど。眼科行きます?それとも精神科ですか?」 「さっ流石です!気遣いに混ぜた少量の言葉の毒!流石はベストセラーをいくつも出し、今一番の売れてる作家、注目の作家、急上昇の作家の三冠を取った男!」 「やめてください。マジではずいです。それより質問に答えてください。なんなら一緒に同行してあげますよ」 「この前人間ドック行きましたけど問題無かったです」 まぁ体は問題ねぇだろな…あるとすりゃ胸板に等しい胸部と学習能力の無さだな、うん。 「俺の皮肉もわかんないんですか?俺、遠まわしになんで三日後に来るはずの人がここにいるか聞いたんです。あ、その人ってあんたですよ?あ・ん・た」 「皮肉なんて高度なテクを…ああそれですか?前のことをちゃんと学習して前もって原稿を取りに来ようと思ったんですよ」 「前…?」 俺前に…………ダメだありすぎて分からん。しかもそれに気づくにはいつだってこいつの息子さんで、こいつ及びその娘のツインズは息子さんに言われて初めてえぇぇえ!?と言い出すのがパターンである。大変だよなー。元凶俺だけど。
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