名も無き叫び

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食事の途中、 美夜が口を開いた。 「昨日は私の罪を緋真様に被せてしまい、申し訳ありませんでした。」 頭を下げ悔しそうに言う美夜。 「私がお聞きしたことを何故貴方のせいになるのですか、美夜。」 私は微笑みを美夜に向けた。 「……優しいのですね…………緋真様は。」 「緋真はただ、当たり前のことをしたまでです。」 私達は笑いながら食した。 ……………… 「美味でございました!!」 箸を置きながら 笑顔で言う美夜。 ふふふと私が笑うと 美夜も笑った。 お片付けは美夜に任せてくださいと 美夜は二つのおぼんを持ち、 食堂に去って行き、 またすぐ戻ってきた。 「美夜、ありがとうございます。」 「いえ!!自室までお送り致します」 笑顔の美夜に 先程朽木様に言われたことを思いだし言った。 「美夜、朽木様の自室まで案内を頼んでも宜しいですか?」 美夜の頭には幾つもの はてなが浮かび上がったが 笑顔ではいと言ってくれた。 「此方にございます。」 縁側のような中庭が隣にある 廊下に通された。 中庭には白い小石が まんべんなく敷き詰められ ときどき、大きな石や 草花が生えている なんともため息を漏らすような 美しい風景だった。 掌で指された方を見ると 一つの部屋の障子だけ 淡い桜の模様の桃色に染め上げられていた。 「ありがとうございました。」 美夜に深々頭を下げた私。 「いえ。では、後程伺いに来ます。」 失礼しますと言い残した美夜の後ろ姿を 私は最後まで見送った。 淡い桃色の障子の前に 私は腰かけた。 「朽木様……、参りました。緋真でございます。」 中から朽木様の声で 入れと聞こえた。 「失礼します。」 障子を静かに開けると 朽木様はもちろん 少し間を開けて 清楚な女性が座っていた。 二人とも死神特有の衣装を着ていた。
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