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「では……」
【治らないと言う事も?】
卯ノ花様の言葉は
私の心を一瞬にして貫いた。
「もちろん、存じております。」
でも、その方が善かったのかもしれません。
ジリジリと痛みが湧くなら
一瞬の痛みの方が
苦しくないのです。
朽木様は先程より下を向いていて
朽木様の長く美しい髪が
私が顔を見るのを拒むように
顔を隠していた。
「そうですか……、それでは余命の方も……?」
「いえ……。余命まで解るくらい、緋真の病は重いものなのですか……?。」
余命……ですか……。
この問いは
緋真の中にも御座います。
卯ノ花様は
申し訳なさそうに深く頷いた。
「おっしゃってくださいませんか?緋真の余命を……」
聞くのはとても怖い……。
しかし、私は聴いていた。
卯ノ花様の口元がゆっくり動く。
「緋真さんの余命は、持って五年、短くて二年。発作については強い刺激等から来ます。強い刺激は避けてください。」
…………二年……?
「そうですか……わざわざ緋真のためにお出でになって頂いて、とても感謝しております。卯ノ花様、ありがとうございました。」
笑顔がひきつってしまう。
失礼しますと言い、
桃色の障子を閉めた。
閉めたと同時に
涙が次々と流れる。
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