名も無き叫び

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「緋真……」 歩き出した私のすぐ背後に 朽木様の姿があった。 「……申し訳ありません………」 私は一度止まって朽木様の方を向かずにそう言うと また歩き出した。 歩き出した私の腕を 朽木様は掴んだ。 「緋真……」 私は掴まれた腕を 払おうとしたけど 朽木様の力には叶わず……。 「…………お離しください」 泣き顔では振り向けず やはり朽木様の方に顔は向けられない。 「離さぬ……何処へ行く気だ……」 「帰ります……戌吊に」 「………そうか…。では、来い。」 朽木様は私の手を引き 廊下を歩き出した。 途中、「緋真様?」と美夜の心配した声が聞こえたけど 顔を上げることは出来ず、 朽木様が美夜に 「卯ノ花隊長が私の部屋にいる。隊舎までお送りしろ」 と、言っていた。 未だ長い廊下を歩き続ける朽木様…… 「コホンッコホッ!!」 軽い発作だった。 心臓がいつもよりドキドキ胸を撃ち 息が苦しくなる。 歩くのを辞めた朽木様は振り返り 私の顔を覗き込んだ。 「済まぬ……」
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