vol.3 宣戦布告

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「新藤! おはようさん」 「はよ、鳥羽」 「……図書室どうなった?」 「……キッチリやっといたっつの」  フン、と怒ったように顔を逸らしながら言う。嫌味でも何でもなく、あの後五時まで残っていたのだ。すると洸は笑いながら言ってくる。 「ありがとうな。ホンマ助かったわ……いつ空いとる? 約束通り、ちゃんと奢るで?」 「……別にいつでも……。お前の方こそ、クラブは?」 「あー……せや。それがあったわ……。……したら、やっぱテスト期間中になってまうなぁ……」  サッカー部に入っている洸。予定が入っていないのは、やはりそれくらいだと日程表を思い浮かべる。 「……じゃあ、そうすっか」 「えぇ!? テスト中でえぇんかいな!? ……いや、そら、オレが言うたんやけど……」 「別に……?」 「--まぁ、新藤やったらな……」 「お前だってそうだろ?」  横を通り過ぎていく生徒達が、呆れたような……羨ましそうな顔で溜め息を吐くのも気にせずに話を続ける。 「……で? 何がえぇんや?」 「そーだな……Moonlitのコーヒーセット、かな?」 「----高っ」  ぼそりと呟いた洸に、チラ、と視線をやれば、慌てたように何でもないと返してくる。ちなみに、コーヒーセットは七百八十円である。 「……まぁえぇわ……頼んだんオレやしな……」 「そーいうコト」  ニッと笑って上履きに履き替える。----が、足を入れた上履きに違和感を感じて逆さにして振る。 「ん? どないしたん?」 「いや……何か入って……」  カサリと落ちてきたのは、器用に折られた紙。 「? 何だ、コレ……」  内心またか、と思いつつも紙を広げる。広げた紙には、やはりお決まりの文句。 『お昼休み、裏庭で待ってマス』  最近の女子高生独特の文字。 「----ゴクローさんやな、イロオトコ」  からかうような一言を投げ、ポンと肩を叩いてくる洸をキッと睨む。 「あーあー。美人怒らしたら恐いなー、もう」  よっぽど楽しいらしい洸がそう言いながら先を歩くのを、もう一度睨んで溜め息を吐く。  手にした紙を、制服の胸ポケットに突っ込んだ。
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