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今までにも、コレに似たようなモノは何度か貰ったことがあった。
色々な告白も受けはしたけれど、自分の中で育つ想いは、確かにアイツへと向いていたから。ことあるごとに断っていた。
今回も例外ではない。
「あ、の…………あの、ね……私、その……新藤くんのコト好きなの! ……もしよかったら付き合って欲しいな、なんて……」
(……やっぱりか……)
見つからないようにこっそりと溜め息を吐く。
「……あの……新藤くん……?」
返事は? と聞かれて我に返る。
「……ゴメン……好きなヤツ、いるんだ」
言ってチラリと少女を窺えば、諦めにも似た表情に淡い笑みを乗せている。
「……本当、だったんだ……噂……」
「……噂?」
「うん。……新藤くん、誰が告っても断ってばっかでしょ? だからね、女子の間で『新藤くんの好きな人は、相当いい人だ』って噂が、ね……」
「いい、人……」
「……頑張ってね、新藤くん……」
淋しげな笑みを浮かべて立ち去る少女を見送って、暫しその場に立ち尽くす。
(……いい人、か……)
たぶん、自分が知る中で一番いいヤツだと思う。……別に盲目的な訳ではなく、客観的に見ても。
もしかすると彼女くらいいるかもしれない、と少しボンヤリしていた時だった。
「ぅわっ!?」
「っ!?」
ガサッ、ドサッという派手な音と声。振り返ってみてみると、木や草に足を取られたらしい洸が茂みにダイブしていた。
「----鳥羽、テメェ……」
「い、いや……ぐ、偶然や、ぐーぜん!!」
あはは、とわざとらしい笑みを浮かべながら素早く立ち上がって後退さる洸。
「どこが偶然なんだよ……? 裏庭なんて意図的にじゃなきゃ通んねぇだろっ!!」
そう。裏庭なだけに、木や草が生い茂っているだけの場所で、他には使われなくなった焼却炉しかない。
「……スマン!! ちょっとこう……好奇心がウズウズと……」
「……ったくテメェは……」
呆れたように溜め息を吐く。
「----好きなヤツ、ホンマにおったんやな……」
パンパンと服に付いている埃を払いながら、確信に似た疑問を投げてくる洸。その問いに、一瞬詰まってしまう。
その間に何か感じたらしい洸にポンと肩を叩かれ、俯いていた顔を上げると、洸の柔らかな視線にぶつかる。
「……とば……?」
「悩み相談受け付け中やで……?」
「……サンキュ……」
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