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「……オレ、さ……前にアイツに告白されたことがあるんだよ……」
「え? …………ほんなら……」
「…………何で悩んでんだ? って思うだろ?」
苦笑を浮かべながら言うのに頷く。
「……お前ら両思いなんとちゃうのん?」
「----あの時、オレがちゃんと応えてればな……」
「応えとればって……?」
「…………唐突すぎてさ……パニクっちまったんだよ……。……アイツ……オレの応え、怯えながら待ってたのに……」
泣きそうに叶の瞳が揺れる。
「……何も、言えなかった……」
俯いて唇を噛む叶。
「----なぁ、新藤」
「…………何だよ……?」
「…………海堂の気持ちを知らへんかったら、お前は海堂のこと、好きにならへんかったと思うか……?」
「え……?」
「……海堂が告白せぇへんかったら、海堂を好きにならんと、他の子の事好きになったか? って聞いてるねん」
言えば少しキョトンとして、ふ、と苦笑を浮かべる。
「…………確かに、さ……アイツがオレの前からいなくなって、やっとアイツの存在の大切さが分かったから……もしも何もなかったら、こんな風に好きにはならなかったかもしんねぇけど……でも、今の気持ちに嘘はねぇから……」
胸のどこかが、ズキリと痛い。
「オレはちゃんと、アイツが好きなんだ」
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