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こんなに伝えたい事いっぱいあるのに何で声が出ないんだろ。なんで元気だった頃にもっと伝えなかったんだろ。 後悔だけ。馬鹿な優衣。 頭がぼーっとして 声の代わりに涙だけボロボロ出るんだ。 ねえ、私本当に死ぬの? いまだって涙もちゃんと出るし。目も見えるし考える事も出来る。 少しだけね、希望を持ってみるけど 嫌でも滲む視界から見える。 慌ただしい先生と看護婦さん、そして倒れそうなお母さんと、こわ張ったようで…真剣な顔のお父さん。 ……そしていつも以上に泣いてる颯斗。 そんな状況見たら私がもう死ぬんだって事分かるんだ。 ………泣かないでよ? 言いたいのに言葉出ないよ。 苦しいよ。 最後に見るのは颯斗の笑顔がいいよ。 声を出そうとしても、かすれて弱々しい声にならない声しかでない。苦しいだけ。 でもその微かな声に颯斗は気付いてくれた。 「なに?!」 グチョグチョの顔で聞く颯斗。 「笑って……」 何回も試してみると声が出た。自分でもビックリした。 かすれて、あんまり前みたいに綺麗に話せないし小さいけど…聞こえたかな? ねえ、話せる事って。伝える事って幸せなんだね? 颯斗を見ると、大好きな笑顔を私に向けていた。 ただ、涙が沢山溢れた。 本当にありがとう。 そう言いたいのに声が出ないよ。 さっきのは神様がくれた最後のプレゼントかな?ねえ…まだ伝えきれてないって。 話せないかわりに私も笑ってみた。 ねえ……だい好きだよ。 私といれて幸せだった? 私は世界一幸せでした。 颯斗はいつも私の側にいてくれたね。 毎日颯斗はお見舞いにきてくれたね。 彼女が病気持ちでごめんね。 約束……叶えてあげれなくてごめんね。 普通にデートとか行けなくてごめんね。 ごめんね。ありがとう。 私は颯斗と一緒なら 殺風景な病室も幸せな場所に思えたけど。 颯斗。愛してます。 『好き』って言ってくれた時。 初めて手を繋いだ時。 側にいてくれた時。 『結婚しよう』って言ってくれた時。 全部忘れないからね。  
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