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俺は今、優衣の隣にいる。 先生や看護婦は慌ただしく、俺には何をしているかわかんないけど何かをしている。 ――『優衣が……っ優衣の容態が急変したの!いますぐ病院に来て…』 優衣のお母さんが泣きながら電話をかけて来た時は思わず携帯を落とした。 気持ちを落ち着けようと、車の中で好きな曲を大音量で聞いても頭に入らない。 大丈夫、って自分に言い聞かせながら急いで病院へ行くと 『最善を尽くしますが……今夜が山でしょう』 悲しそうに先生が言った。 もちろんその言葉を無視して優衣の側に行ったよ俺。 …何してんの? 俺、泣いてるんだぜ? また『泣かないでよ』って笑って言えよ。 また赤ちゃんお前のお腹に戻ってきたら、三人で公園行こうなって、遊園地行こうなって、約束しただろ……? 結婚もするって約束しただろ……? 五か月前だった、 優衣の病気を知ったのは。 ――『私白血病だって。泣かないでね』 点滴をうけながら優衣は無理に笑顔を作って言った。 その笑顔が痛かった。 一番泣きたいのはお前だろって。 いつも優衣の笑顔に元気をもらうけど……あの時は苦しくて泣いてしまった。本当にいつも泣いてばっかだった。 《急性白血病》 あの時、お腹に赤ちゃんが居たんだよな。 赤ちゃんは空にいってしまったけど……。また、優衣のお腹に戻るから、不思議と大丈夫だった。泣いちゃったけどな…… 優衣は、めったに泣かないのに 自分をせめて毎日泣いてたな。 ごめんな、上手く支えてやれなくて。 男らしくなくて、ごめんな? ただ抱き締める事しか出来なかった。 気のきいた台詞とか言えなかった。 元気付けてやる事も出来なかった。 優衣……三か月くらいしか持たないと言われたのに、凄いよ優衣。 空の赤ちゃんと俺と両親の為に頑張ったんだよな。凄いよ。強いよ。誰よりも。 弱音吐いた事さえ無かったな。 『結婚出来るように頑張るから!』 って笑って言ってたよな。  
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