―序章―

10/27
前へ
/114ページ
次へ
   一見、その水色の長髪の姿に、女性かと思ってしまったが、その所作に男だと気づく。髪は一つに束ねられ、谷に吹く風に揺れていた。  オーランはその姿を凝視すると、弓使いは弓同様に自身の身の丈以上の矢を手に持ち、弓を構える。   「い、いかんっ!!」   「余っている盾を重ねよっ!!」    騎士達は即座に盾を重ね合わすが、大岩の上から射られた長き矢は、先程と何ら変わりなく鉄製の鎧を纏う騎士の身体を易々と貫いた。   「ペイジッ!!私の槍と盾を持てっ!!」    オーランは弓使いを見据えつつ叫ぶと、自身の槍を手にする。オーランが持つ円錐状の槍は、他の騎士が扱う槍より十尺程長く、槍の先から柄に至っては倍程の横幅がある。盾も同じく厚みがあり、常人が片手で持ち上げるには余りにも重い。  オーランは盾を鱗の様にする騎士達の前で立ち止まると、振り返らず叫んだ。   「皆の者っ!炎が消えたならば直ちにこの場を離れよっ!!」   「マリア様を王国へお送りするのだっ!!」   オーランの声が谷に響いたその時、弓使いは再び矢を取り出し、弓を構えるとオーランに向け矢を放った。  
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加