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一見、その水色の長髪の姿に、女性かと思ってしまったが、その所作に男だと気づく。髪は一つに束ねられ、谷に吹く風に揺れていた。
オーランはその姿を凝視すると、弓使いは弓同様に自身の身の丈以上の矢を手に持ち、弓を構える。
「い、いかんっ!!」
「余っている盾を重ねよっ!!」
騎士達は即座に盾を重ね合わすが、大岩の上から射られた長き矢は、先程と何ら変わりなく鉄製の鎧を纏う騎士の身体を易々と貫いた。
「ペイジッ!!私の槍と盾を持てっ!!」
オーランは弓使いを見据えつつ叫ぶと、自身の槍を手にする。オーランが持つ円錐状の槍は、他の騎士が扱う槍より十尺程長く、槍の先から柄に至っては倍程の横幅がある。盾も同じく厚みがあり、常人が片手で持ち上げるには余りにも重い。
オーランは盾を鱗の様にする騎士達の前で立ち止まると、振り返らず叫んだ。
「皆の者っ!炎が消えたならば直ちにこの場を離れよっ!!」
「マリア様を王国へお送りするのだっ!!」
オーランの声が谷に響いたその時、弓使いは再び矢を取り出し、弓を構えるとオーランに向け矢を放った。
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