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二人の少年の戦いは、熾烈を極めていた。
ぶつかり合い、せめぎ合い、時には離れ、また激突。傍目には、二人の実力は拮抗しているように見える。だが、それは違う。
レオという少年は、先程からヴォルカニックという赤い炎を多用して攻勢に出ている。対するクロスは、魔法も何も使わず身体能力一つでその猛攻を凌いでいるのだ。
このまま続ければどちらに軍配が上がるのかは、言うまでもない。
それでも拮抗に見えるのは、ひとえにレオの体力が桁外れだからと言えよう。仮にレオが今のクロスやスコールほどの魔力量しかないなら、とっくに魔力は枯渇していただろう。
「そのスタミナだけは認めてやる」
「黙れぇッ!!」
クロスの言葉を遮るように、レオの斬撃が襲いかかる。
クロスはそれを、刀を揺らすだけで軽くいなす。
「だが、がむしゃらすぎる。お前は、周りがまるで見えていない」
いつかの俺のように……な、と心の中で付け足す。
憎しみは、確かに人を強くするだろう。だが、一度その対象を前にすると視野を果てしなく狭めてしまう。
実体験から、クロスはその事を知っていた。
「周りなんか知るかッ! テメェを殺せばそれで終わりだろうがッ!」
レオが叫ぶ。
確かに、そうだ。だが、レオではクロスを殺せない。
憎しみが強すぎるレオは、その分クロスしか見えていないのだから。
「終わり……だ」
クロスの静かな宣言と共に、レオの背後の地面が光を発する。
あらゆる色を塗り潰す漆黒の線が紡ぎだしているのは、複雑怪奇な紋様。万物の構造を支配する錬成陣。
その存在に、レオはまるで気付いていない。気付くどころか、むしろ功を競ってクロスに向かってくる始末である。
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