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罠
「どこ行こうか?」
人混みを抜けて広くなった道で手を握ったまま振り返り令弍が聞いた。
「うーん。」
この日のデートの時間は15時まで。
私は横浜に来るついでにアルバイトの面接の予定を入れていた。
令弍にもそれはメールで伝えていた。
「あ、面接だったよね。もう行かなきゃだね。」
「うーん。」
もう少し一緒に居たかった。
離れるのが寂しかった。
「どうしたの?」
「うーん。」
面倒臭い女の典型的なパターンだ。
普段ならこんな事はしない。
「面接行かないの?」
令弍が促す様に手をほどこうとした。
私は一瞬令弍の手を強く握った。
令弍はそれに気付いたのかほどくのを止めて握り返した。
「どうしたの?面接行かないならデートする?俺はまだ一緒に居たいし。」
「俺は」とはずるい。
私の気持ちに気付いている癖に「俺も」とは言わない。
「うん。」
「愛も一緒に居たい?」
やっぱりずるい。
「うん。」
恥ずかしさを隠すように繋いだ手を揺らしながら答えた。
令弍はまた私の上にいる。
「どこ行く?」
私はここの土地勘も無く、今までの男とはカラオケかカフェでも行き最後はホテルだったので思い付かない。
「愛が嫌じゃなければホテル行く?あ、何もしないよ。俺ホテルをそうゆう場所だと思ってないから。カラオケもテレビもゲームもあるし。遠くまで来て疲れたでしょ。」
所詮は令弍も他の男と変わりない。
だけど、信じてみたくなった。
「絶対だよ?何もしないでね?」
「しないって。俺の事縛ってもいいよ。愛こそ俺を襲うなよ」
軽い冗談を混ぜながら答える令弍。
令弍は違う。
「どこにしよっか?ここは?良くない?」
「うん。どこでも良いよ。うちホテルの違いはよくわからないし。」
中に入り部屋に入り鍵をかけた。
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