出逢い。

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出逢い。

「私は愛。高校二年生。優しいお兄さん、お小遣いちょうだい。」と出会い系サイトで男性に呼び掛ける。 選ぶ基準は低リスクで高収入を望め、勿論見た目もだがルックス等より人相で判断。 そんな事をしているなんて誰も知らず、偽りの笑顔で振る舞う私を優しく迎え入れる。 「天然ボケ」と呼ばれるのは好都合で、宿題を忘れても遅刻早退欠席も仮病も故意とも気付かずに「全く愛はしょうがないなぁ」と呆れ笑い許される。 さりげない気前の良さを見せ付け、付き合いも良しとなれば不思議と人は寄ってくる。 いやそうする事でしか人と関わる事が出来なくなっていた。 中学生の頃、容姿や身形で判断され普通にしているのに人は離れていった。 仲間外れにされいつも独りで、何人かこっちを冷たい視線で見ながら陰口をたたいている。 先生も私と目を合わせない。こんな私の扱いに困ったのだろう。 陰湿な虐めを乗り越え高校デビューを果たした。 本当の私を知る人達とは距離を置き、他の中学校から来た人達に近付いていった。 あれから二年生も終わりに差し掛かった頃、出会い系サイトの「趣味:バンド」という項目を見付けた。 そこには「ボーカル急募。一ヶ月後にライブを控えていますがボーカルがいません。」と載っていた。 現実から目を背ける為に独り歌う日々。 微かな希望を乗せて投稿した。 「歌は上手いかわかりませんが、やってみたいです。」と書き込んだ。 「一度会ってみましょう。」と返事が来た。 それから一ヶ月みっちり歌の練習をし、スタジオに何時間も入って声がかれても歌い続けた。 ライブはなんとか終わった。 もっとやりたい気持ちはあったが、メンバーはそのライブを最後に解散した。 歌う事が好きで、また独りで歌う日々。 ライブやスタジオと違い家族や近所の迷惑にならない様に、小さく一音一音を優しく静かに歌った。 もう一度大きな声で歌いたいと思い、出会い系サイトに書き込んだ。 「ボーカルで加入希望。歌は上手いかわからないけど歌いたいです。」と、歌いたい想いとは裏腹に自信の無い書き込み。 返事が来た。 「歌はハートだ。」と自信の無さを指摘された。 私の弱い部分を見抜かれた様で、本当の心に触れられた様で腹が立った。 それをごまかしの笑顔で「そうだよね。」と返した。
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