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「え、えーと……、そんな機密事項みたいなコトをボクなんかに話しちゃってもよかったんですか?」
とりあえず聞いてみる。
「ああ、いーのいーの。ひかるクンは恩人だしね」
恩人だからって話してもいいことなのかなぁ……。
……ん?
不意に何か焦げ臭い匂いがした。
あ゙、そういえば……!
「ちょっとすいません愛流さん」
急いで台所に戻ると案の定。シチューに関しては何ら問題はなかったけど、同時進行してた鮭のムニエルがとんでもないことに。
はあ……、これじゃとてもじゃないけど食べられそうにないなぁ……。
仕方ないけど今日はシチューと白ご飯の夕食にするしかないかぁ。
ちょっぴりブルーになったところに、
「どーしたのかなひかるクン?」
愛流さんの声が飛んでくる。
「いや、ちょっと夕飯のおかずを焦がしちゃって……」
「もっ、もしかしてあたしのせい……」
「そっ、そんなことないです! それにメインは無事なので。あ、ご飯食べますか?」
「えっ! いいの!?」
「はい」
目をキラキラ光らせて満面の笑みを浮かべる愛流さんを見て、少しだけ罪悪感みたいなのを感じた。
ご飯については本心から出た言葉だけど、せっかくやってきた非日常を近くに留めておきたかったって理由もあるから。
「それじゃあたし手伝うよ」
「いや、いいですよ。お客さんなんですから」
「気にしない気にしない。あたしがやりたいだけだからさ」
愛流さんはニコニコしながらボクの隣にくる。手伝うとはいえ、あとはシチューをコトコトするだけだし……。
愛流さんにはシチューを見てもらうことにして、ボクは台所周りの片づけを始める。
「どうしました?」
ある程度片づけが済んだところで後ろから肩を叩かれた。
愛流さんだろうと思って振り返ったその先には、
「ひかる? 私に分かるよう、少し説明してもらってもいいかしら?」
はわわわ……、べっ、ベタすぎるっ。
そこには笑顔の玲菜が立っていた。口元とこめかみをピクピクさせながら。
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