2st stage

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「まぁまぁ、落ち着こう、ね?」  怒り狂った、と表記していいのかわからないが、先ほどとは比べ物にならないほどの剣幕をした玲奈を必死に落ち着かせようとする愛流であったが、火に油を注ぐようなもの。  それを見ていたひかるが慌てて二人を止めに入ろうとするものの、正直割って入っていいのかどうかわからなかった。玲奈の剣幕に怖気づいたのもほんの少しはあるのだが、玲奈の優しさが心に染み入ったからだ。だがしかし。このまま放っておくわけにもいくまい。  ひかるはひとつため息をついて優しく玲奈に声をかけた。 「玲奈、大丈夫だよ。愛流は風邪じゃないから」 「ひかる……」 「大丈夫だから、その手を離して? 授業始まっちゃうよ?」  優しく微笑むひかるに玲奈は安心したのだろうか、それまでつかんでいた愛流から手を離し、ひかるの胸に飛び込んだ。その瞬間、玲奈の瞳から数滴の雫が太陽に照らされてきらりと光るのを愛流は見た。 「ひかる……っ」  玲奈の頭を優しくなでるひかるの姿を見て、愛流はこれまで感じたことのない、なんというのかよくわからない感情を感じた。  それは、これまで感じていた独占欲というよりも苦しい感情。しかし、以前ならばここで玲奈からひかるを取り戻さずに見ていただろう。泣いている玲奈からひかるを取ったりはしなかっただろうに…… 「愛、流……?」  止められなかった、というべきか。  止まらなかった、というべきか。  それとも、止まりたくなかったのか。  気が付くと愛流は、ひかるから玲奈を引き剥がしていた。  驚愕するひかるが、玲奈が、自分を見つめている。
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