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「愛流」
膝に埋めていた愛流が顔を上げると、視線の先には微笑むひかるの姿があった。
「泣いてるの?」
そう、優しく聞いてくるひかるに、愛流は素直に頷く。
「どうしてあんなことをしたのか、わからないの。玲奈がひかるに抱きつくことなんて、普通の事なのに、お腹なら、こう、何か嫌な気持ちが溢れてきて。気が付いたら、体が動いてて…」
「うん」
「ほんと、どうしてだろう」
「うん」
愛流の隣に座り、彼女の瞳からあふれ出す涙を服の裾でそっと拭いながら、ひかるは言った。
「人の感情なんて、わからない事だらけだよ。焦って答えを出さずに、ゆっくり考えていけばいい。それは、愛流にしかできないことだから」
「ひかる…」
「でも、愛流は一人じゃないから、僕や玲奈に相談しながら、ゆっくり考えていけばいいよ」
ひかるの優しさに、愛流は安堵するも、それと同時に、急に玲奈への申し訳なさがこみ上げてくる。しかし、それを察したひかるは流石である。
「玲奈も、話せばわかってくれるよ」
間をおかず、にこりと微笑んでそういえば、愛流の気持ちも軽くなったようで、瞳を涙で潤ませながらもようやく笑うことができた。
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