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「ううん、きっと、“希望”だよ」
愛流の疑問を否定した後、ひかるは何か思いついたのだろう急に上半身を上げ、目をキラキラと輝かせながら愛流を覗き込んだ。
「きっと“希望”って、僕らみんなが行けるようになるための“希望”なんだよ! “彼の地”へ行けるための鍵なんだよ! だから優秀な人ばかり集めて、きっとあそこで何年も研究してるんだ、みんなのために! この、閉じられた世界から出るために!」
少年のような瞳をする少年に、愛流は思わず笑ってしまった。馬鹿にしたのではなく、ひかるを愛おしく思ったからだった。
人のため、みんなのためになることを最良とするひかるを、愛流は心から尊敬しているし、そんなひかると一緒に居られることを誇らしくも思っていた。そんなひかると比べると、先ほどの、何とも懐の小さな自分の発言が、恥ずかしかった。ひかるは、こんなにもみんなのことを考えているのに。
そんな恥ずかしさを拭い去ろうとして、愛流は少し余計に陽気に言った。
「私も、そうだったらいいと思う!」
そう言った愛流に、ひかるは満面の笑みで言う。
「現実にしよう、愛流。僕はきっと、来月の試験にパスして、きっとコアへ行く。そして、みんなを“彼の地”へ連れて行く“希望”になるんだ!」
「私も! ひかると一緒に“希望の星”へいく!」
「よし、愛流。そうと決まれば、授業に行かなくちゃね」
ひかるがそう言って立ち上がると、タイミングを計ったように一限目の終わりを告げる鐘が、学校に響き渡る。
「その前に、玲奈に謝らなくちゃ」
愛流も笑顔で立ち上がり、笑顔で屋上から去って行った。
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